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先日、在庫を捌こうと一念発起し中野ブロードウェイボドゲフリマに参加し、抱えていた在庫をある程度解消することに成功しました。

その経験を踏まえた上で、「即売会で売る」という観点からどんな「ゲームデザイン」が考えられるか、について自分なりに感じたことを書いてみたいと思います。

まず結論からいうと、ゲームデザイナーは「売りやすいゲーム」を作るべきだと思いました。時勢のブームに乗れとか、客に媚びろとか、そういうことではありません。

即売会に訪れたお客さんに30秒で伝えるべき情報こそが、ゲームデザインの最初に準備しておくべき情報なのではなかろうか、という考えです。

これを明確にすることで、結果的に売りやすいゲームに仕上がると思います。

では、具体的に何を伝えるべきなのでしょうか? 私は以下3点を抑えるべきだと考えました。

・それはどんなゲームなのか?
・ほかのゲームと何が違うのか?
・そのゲームをプレイする前とした後で、プレイヤーはどう変わるのか?

「それはどんなゲームなのか?」について。
概要、もしくは箱の裏面に集約すべき情報と考えます。例えば、自分がゲームショップや即売会などで、たまたま目に留まった商品を何気なく手に取ったとき、何をするでしょうか? 大概、箱の裏面を見ると思います。そして何を思うでしょうか? おそらく、以下のようなことを思うはずです。

何人プレイで、1プレイあたりどのくらいの時間がかかるか、対象年齢は? コンポーネントは何が入っていて、セットアップするとどんな感じになるか。ゲームのジャンルは? フレーバーは? アートワークはどんな感じだろうか……と。

「それはどんなゲームなのか?」については、何か知らないものを手に取った時に感じる、ごく自然な疑問点について、ひとつひとつ答えてゆけば良いと思います。

「ほかのゲームと何が違うのか?」について。
デザイナーがプレイヤーに訴求したい点、言い換えれば、その商品の売り、と考えます。これが薄いと、お客さんの購買意欲も薄れてしまうのではないでしょうか? 逆に言えば「ほかのゲームと何が違うのか」この一点さえ抑えてしまえば、お客さんは必ずその商品を手に取るはずです。

前例のないギミック。ユニークなテーマ。ニッチなフレーバー。心をくすぐるアートワーク。デザインを通してプレイヤーに訴求する点について、デザイナーは選び、磨きをかけ、尖らせるべきだと思います。まんべんなく、ではなく、どれかひとつ効果的な一点を抑えるべきだと思います。でないと、かえってお客さんを混乱させてしまう恐れがあります。ほかのゲームと違う一点。それこそが紛れもなく、そのゲームの強味となることでしょう。

「そのゲームをプレイする前とした後で、プレイヤーはどう変わるのか?」について。
ゲームとはひとつの体験だと思います。プレイすることで何かを経験するためのツール、と考えます。体験する前と後で、プレイヤーの心理がどう変わるのか。その過程をデザインすることが、ゲームデザイナーに与えられた最も大切な使命と考えます。

どんなゲームをプレイするにせよ、プレイヤーの心理は変化します。もしそのゲームが面白ければ、プレイヤーもう一度やりたいと思うでしょう。琴線に触れなければノットフォーミーとなるでしょうし、どうしようもないクソゲーだったら時間を返せと怒りを覚えるかもしれません。好印象にせよ、悪印象にせよ、そのゲームをプレイしたことで、プレイヤーの心理は変化したのです。

デザイナーは最初の段階で、この変化についてゴールを定めるべきだと思います。つまりゲームを通じて、プレイヤーをどう変化させたいかを、あらかじめ想定しておくのです。

例えばゲームを通じて、わいわい盛り上がるようなパーティーゲーム。勝敗は二の次で、それよりもプレイヤー同士でどれだけ泣き笑いできたか、そのゲームには求められます。二人用のゲームだったら、勝負の行方がファジーになるような要素は不要で、勝ち負けこそが重要になります。

三人~四人用の一時間を超えるくらのゲームでは、一手一手のジレンマが求められます。システムがしっかりしていれば、さらに競技性を求めるプレイヤーも出てくることでしょう。

他にもTRPGのように物語やロールプレイが求められたり、人狼のように議論が求められたりするゲームがあります。プレイヤーが求めるもの、とは、そのゲームを通じて何を実現したいか、と言い換えられます。

ジレンマを求めるプレイヤーは、その結果もたらされるカタルシスを。競技性を求めるプレイヤーは、さらなる強さを。物語やロールプレイを求めるプレイヤーは、世界への没入感を。議論を求めるプレイヤーは合意を、それぞれ実現させたいと願っています。

「そのゲームをプレイする前とした後で、プレイヤーはどう変わるのか?」とは、プレイヤーがそのゲームを通じて実現させたい願い(こんな体験をしたい、こんな思いに浸りたい)を、汲み取り具体化させることと言えます。

結びとして、ゲームデザインの最初に準備しておくべき情報は以下の通りです。
「それはどんなゲームなのか?」
→そのゲームについて想定される質問と、その回答(概要)。

「ほかのゲームと何が違うのか?」
→そのゲームでデザイナーが最も訴求したい点。

「そのゲームをプレイする前とした後で、プレイヤーはどう変わるのか?」
→そのゲームを通じてプレイヤーが得られる体験。

この3点を30秒で説明できる準備をしておけば、「売りやすいゲーム」が作れると思います。